以前「なぜ地方書店では本の発売が遅れてしまうのか」という記事で「取次会社」というものについて少し触れましたが、今回はその「取次会社」について解説していきます。
取次会社って何?
「取次会社」は「出版取次」や単に「取次」とも呼ばれます。
日本で作られる出版物のほとんどは
という流通ルートで全国に配本され読者の手に渡ります。
つまり取次会社は、出版社と書店を仲介する役割を担っているのです。
現在市場の7割を「日本出版販売」と「トーハン」の2社が占めています。
取次会社の役割
取次会社は、出版社から発行される膨大な数の本を集約し、全国の書店に配本する作業がメインです。
いわゆる卸業ですので取次会社は出版業界の問屋、商社のような立ち位置になります。
取次会社は各書店の規模・過去の売り上げ・返品数などのデータを持っており、それを基準に適切な数の本を全国の書店に分配することができます。
本はほぼ毎日新刊が発売されますが、それを書店側が毎回発注を行うことになると、売り場や販売の業務に充てる時間が減ってしまいます。
配本を取次会社に任せることで、書店はいちいち新刊を注文しなくても本を仕入れることができ、出版社も書店に営業をかける時間を減らすことができます。
つまり取次会社は出版流通に関わる情報と物流をコントロールしているのです。
また、出版社と協力して本のイベントやフェアを行ったり、書店の立ち上げや経営のサポートなどのコンサルティング業務も行ったりしています。
再販制度と委託販売制度
この流通網があると同時に出版業界には大事な2つの制度があるのでこちらもご紹介します。
再販制度(再販売価格維持制度)
本の値段は出版社が決めるので、書店で勝手に値上げや値下げをしてはいけないという制度のこと。
大きな書店でも小さな書店でもネットショップで買っても本の値段が一緒なのはこの制度があるからです。
これにより価格競争が生まれないため、体力のない書店でも生き残ることができ、地方格差が出にくくなります。
委託販売制度
一定の期間であれば売れ残った本は返品することができるという制度のこと。
これにより週刊誌や月刊誌などを返品がすることができ、在庫リスクを抑えることができます。
また、年に1冊~2冊しか売れない本も店頭に置くことができるため、書店はマンガ、文芸誌だけではなく、辞書・化学・地理・音楽・宇宙など多種多様なジャンルを本を店頭に並べることができます。
この2つの制度により本は利益が少ない分大量に仕入れることができ、余った本もすぐに返品することができます。
しかし、「たくさん注文して売れなかったら返せばいい」という考えだと、大量の返品が発生し、出版社・取次会社が大損をしてしまいます。
そのため取次会社は、たとえ注文品でも本当に適切な数なのかどうか判断し、入荷数を調整して返品率を少しでも抑える役割もしています。
取次会社の未来
取次会社を介した流通網は日本独自のシステムです。
これにより日本はほとんどの本が全国にまんべんなく大量にいきわたり、本が私たちの生活に溶け込むまでになりました。
しかし、近年この流通システムが徐々に崩れてきています。
インターネットやECサイト、電子書籍の影響で出版業界の売り上げが減少し、最近では流通コストの削減をしようと取次会社を通さず出版社と書店が直接取引をするところがでてきました。
このような直接取引がメジャーになってくると、将来取次会社の存在が危ぶまれる状態になってきているのです。
今後の出版業界の流れは取次会社が大きなカギを握っているかもしれません。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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