私は退職から再就職までの約半年間無職でした。
私のように何かの事情で会社員を辞める人は多いと思います。
・とにかく働きたくない人
・会社員を辞めて自営やフリーランスを始める人
私も会社のストレスは消えましたが将来の不安は消えませんでした。
・会社を辞めようと思っている人。
・今の働き方に不安や悩みがある人。
・個人事業やフリーランスを目指す人。
・ドキュメンタリーが好きな人。
それでは解説していきます。
『無職本』の概要
どこにでもいる普遍的な人々が、「無職」という肩書がついたときに考えていたこと、感じたことを、それぞれの表現方法で自由に書いてもらいました。同じテーマながら各人各様の考え方が表されている、そんな本です。
「BOOK」データベースより引用
『無職本』は水窓出版より2020/7/2発行されました。
(水窓出版はなんと1人で経営されている出版社さんです!)
ページ数は167ページで、8人の著者による共著です。
その8人とはミュージシャン、声優ブロガー、小説家、マンガ家、Youtuber、映画監督、会社員、書店員というバラバラな職業。
概要に書いてある通り、8人の著者が無職の期間に何を考え、何を感じていたのかをそれぞれ書いています。
実は私のこのアイコンを書いてくださった幸田夢波さんも執筆されています。
「なんだ身内ネタかよ」って思った人、身内贔屓抜きに面白かったのでぜひ読んでください!(笑)
印象的な表紙
内容紹介の前に、まずこの本を語るうえで外せないのが印象的な表紙です。
真っ白な表紙にゴシック体で力強く「無職本」という文字が書かれているのみ。
ちなみに帯もありません。
思わず「なんだこれは?」と手に取ってしまうようなインパクト・・・!
裏表紙も真っ白。書籍の情報も一切なし。
何にも染まらない「無色」を表現したすごく潔いデザインです。
『無職本』の著者の紹介
先ほども紹介した通り『無職本』は8人の著者による共著です。
それぞれのプロフィールはこちら。
松尾よういちろう
1981年4月8日愛知県名古屋市生まれ。2008年~2020年3月までフォークロックバンド「井乃頭蓄音団」のオリジナルメンバーとしてボーカルを担当、フルアルバム6枚を発表。現在はソロで活動中
ホームページ→松尾よういちろうHP
Twitter→@ino_matsuo幸田夢波
声優ブロガー。オンラインサロン『夢波サロン』オーナー。高校生で声優デビューし大学在学中にアーティストデビュー。約8年間の声優事務所所属ののち、フリーランスとなりブロガーになる
ブログ→幸田夢波のブログ
Twitter→@dreaming_wave太田靖久
1975年生。神奈川県出身。2010年『ののの』で第42回新潮新人賞。2019年に電子書籍『サマートリップ他二編』(集英社)刊行。フィルムアート社ウェブマガジン「かみのたね」にて『犬たちの状態 犬を通して世界を認識するための連作』(共作/写真家・金川晋吾)を連載。その他、インディペンデント文芸ZINE『ODD ZINE』を企画編集している
Twitter→@ohta_yasuhisa
note→太田靖久スズキスズヒロ
1992年宮城県仙台市生まれ。小学3年生の時、「石ノ森章太郎のマンガ家入門」を読んでマンガを描き始める。著書に『空飛ぶくじら スズキスズヒロ作品集』(イースト・プレス)がある。第2種電気工事士、危険物取扱者などの資格を保有している
Twitter→@suzuhirosuzuki銀歯
田舎で生まれ育ち、底辺労働を続ける傍らで、クルマで山道をドライブしながらYouTubeにて底辺労働者の日常や仕事のこと、自己哲学を延々と垂れ流すラジオ動画を投稿し続けている。期間工、ブラック企業、工場労働、零細企業で主に働く
Youtube→銀歯
Twitter→@gin__ba竹馬靖具
1983年生まれ。2009年に監督、脚本、主演を務めた「今、僕は」を全国公開。2011年に真利子哲也の映画「NINIFUNI」の脚本を執筆。2015年、監督、脚本、製作をした「蜃気楼の舟」が世界七大映画祭に数えられるカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のフォーラム・オブ・インディペンデントコンペティションに正式出品され、2016年1月より、アップリンク配給により全国公開
Twitter→@chiyuwfilm茶田記麦
1981年7月、水面と同じ高さの東京下町で生まれ、川を越え坂を上り山の手の学校に通ったため、どこ育ちと地名とともにアイデンティティを語ることが難しい。小中高をエスカレーター式の女子校で過ごし、早稲田大学第一文学部を卒業。現在は千代田区にて労働する会社員小野太郎
1984年山口県生まれ。これまで東京堂書店神田神保町店、文榮道山口大学前店、ブックセンタークエスト黒崎店で働く。2019年秋、退職。現在、福岡県北九州市で妻とルリユール書店を営む
ホームページ→ルリユール書店HP
Instagram→@librairie_reliure「BOOK著者紹介情報」より引用
職業も経歴もバラバラ。自身の体験をエッセイ風や、小説、漫画など様々な手法で無職について書かれています。
『無職本』の内容紹介
『無職本』はジャンルでいうと自己啓発書ともビジネス本とも違い、あえて言うならばドキュメンタリー・アンソロジーなのかなと思いました。
無職になった人の話ですが、内容としては働き方、生き方についてにも触れられています。
その中で印象に残った話やセリフを一部ご紹介します。
無職っなに?|松尾よういちろう
専門学校を中退し、一念発起して上京した松尾さんはとある工場でアルバイトとして働きながらミュージシャンを目指しました。
しかし、なかなか売れず、次第に音楽に触れる時間が減っていきます。
そしてついに正社員としてメジャーデビューしてしまいます。
仕事をそつなくこなし、周囲からも認められ仕事を続けていた松尾さんでしたが、定年退職する先輩社員の送別会に参加したときにふと冷静になります。
「僕がこの生活を定年まで続けるとなると、あと43年くらい続けるのか。43年・・・え、無理だ。絶対に無理無理無理無理無理!」
『無職本』P.25
そう思った松尾さんは1か月後に退職し、音楽の道に戻ったそうです。
その後、アルバイトを続けながら音楽活動を今でも続けています。
そんな中、ある日、とある事件で逮捕された男性の肩書・”自称”ミュージシャンを見て衝撃を受けます。
報道にあった”自称”ミュージシャンという肩書には、胸を締め付けられるようなもの悲しい感情を抱いた。(中略)
世間では、知名度のないミュージシャンは、それを職業とすることが認められていないのであろうか。『無職本』P.9より
このニュースを見て松尾さんは仮に自分が良くないニュースで報道される機会があれば、”自称”ミュージシャンと報道されてしまうのだろうか、それならいっそ無職と報道された方がマシだと本で述べています。
ミュージシャンに限らず、作家、漫画家などのクリエイティブ職。タレント、俳優、芸人などの芸能人。ここ最近増えてきているブロガー、Youtuberなどの人たちの中で、その仕事だけ食べていける人たちはごくごくわずかです。
世間では仕事や職業を、雇用されていたり、収入が多い方を本職や職業と呼ぶ傾向が今でも強いですが、メインの収入があったりある程度の知名度がない限りその職業を名乗ることは許されないのでしょうか。
章の最後で松尾さんはこう言っています。
一般的に『無職』とは、定職に就かず、稼ぎのないこと指す。(中略)
しかし、僕自身としては、就職し音楽と離れてしまっていた期間を『無職』だったと主張したい。
その『無職』であった期間があったからこそ、現在に至るまで、ミュージシャンとしていられるのだから。『無職本』P.30
仕事とは、職業とはなんなのかを考えさせられるとても印象的な言葉でした。
私も1銭も稼げてないけどブロガーと名乗っていいんだと自信が付きました。(もっと努力しなきゃ・・・)
職業:無職|幸田夢波
幸田夢波さんは、高校時代に声優デビューし、大学時代にアーティストデビュー。
その後事務所を退所し個人ブログを開設。声優業界での経験や体験談・フリーランスの生き方などを発信しています。
現在は声優業、ブログ、Youtube、ライター、コンサル、物販、オンラインサロン運営など多くの仕事をしているパラレルワーカーでもあります。
幸田さんは、事務所を辞めた後、貯金を崩しながらの極貧生活に入ります。
そんな厳しい環境の中でも、ひたすらブログを書き続けることで少しずつ収入を得るようになり、発信・営業を続けたことにより、自分で仕事を取れるようになっていきます。
特に私は、章の最後の実際に無職になった時に感じた「無職になって良かった話」がとても印象に残りました。
私は独りぼっちにはならなかった。事務所を辞めても連絡をマメにくれる人や、学生時代の友達がいた。逆にそれによって私は自分の交流関係に自信が持てるようになった。
(中略)属するコミュニティがなくなった今、それでも私と繋がってくれている人は、私個人と繋がりたいと思ってくれている人だ『無職本』P.58
そして、無職になっても死にはしない。
(中略)辛かったし二度と経験したくないけど、大切なものに改めて気付かされた。
自分にとって必要な時間だったと思う。『無職本』P.59
私も経験したことなのでよくわかりますが、無職になると交流関係が一気に減ります。
会社の人とは仲が良かったですが、それは会社での話。
会社というコミュニティがあったから自分は成り立っていたんだなと実感しました。
辞めたあとは正直めっちゃ寂しかった
けれど、心配してくれた家族や友人がいたことは私にとって救いでした。
無職になると確かに職は無くなるけれど、すべてを失うのではなく、気づかなかった価値や自分に足りないことを知るいい機会なのかもしれません。
まとめ/『無職本』を読んだ感想
私は、無職になったときのことを思い出しながらこの本を読みました。
自分が無職を経験したこともあり、とても共感できたことが多かったです。
本と実体験を交えて思ったのは無職の期間は決して無駄ではないということです。
もちろん、収入は途絶えたり、将来への不安はありました。
しかし、無職になることで価値観が変わったり、自分を客観的に見つめなおす機会ができたと思っています。
仕事をがんばるのはとても良いことですが、一度立ち止まったり、休んだりすることも必要です。
今の日本社会でそれをするのは勇気がいることかもしれませんが、この本を読んでみて他の人の考えに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
【追伸】
幸田夢波さんが、今回の『無職本』の執筆依頼から出版までの経緯をnoteにまとめていますので、気になる方はそちらもぜひご覧ください。
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