本多孝好さんの『at home』を読んだので感想を書いていきます。
『at home』のあらすじ
父は泥棒、母は結婚詐欺師。僕はパスポート偽造屋で働いており、弟はゲームの中で世界を救ってばかりいる。一家はそれなりに平和に暮らしていたが、ある日、母が結婚詐欺のターゲットに逆に誘拐されてしまう。犯人に呼び出された父と僕は、偽札が詰まった紙袋を持って母を助けに向かうが―。巧妙な伏線が張り巡らされ、驚きと涙なくしては読めない結末を迎える表題作を始め、現代の家族のかたちを描ききった傑作小説集。
amazon内容紹介より
内容紹介にも書いてある通り、表題作の『at home』を含む【家族】をテーマした4つ作品が収録されている短編集です。
また「at home」は2015年に竹野内豊さん主演で映画化されています。
それぞれの4つの作品を簡単にご紹介します。
at home
偶然出会い、一緒に暮らし始めた血のつながらない5人の家族の物語。
それぞれ泥棒、結婚詐欺師、パスポート偽装者の犯罪の仕事をしてるが、強い絆で結ばれている。
ある日、結婚詐欺師の母がターゲットに誘拐されてしまう。犯人に呼び出された父と兄は助けに向かうが思わぬ方向に話が進んでいく。
日曜日のヤドカリ
主人公が結婚した女性は弥生という小学生の娘がいた。主人公と弥生は特にきまずいわけでもなく仲はとても良いがお互い敬語で呼び合う不思議な仲であった。
ある日妻の真澄が同窓会に出かけている日に突然マキオという見知らぬ男の子が訪ねてくる。
聞けば、マキオの父が一週間帰ってきておらず、主人公の家によく手紙を出していたらしい。
もしかして真澄がマキオの父と不倫関係だったのでは?と疑いをもった3人はマキオの父と真澄を探し始める。そんな中、意外な人物が3人の前に現れる・・・。
リバイバル
やくざから高額の借金を律義に返し続けていた主人公は、ある日借金返済免除と引き換えに妊娠した外国人の女性と形式上の結婚をし、同棲することになる。
一体どうしてこうなったのかという疑問が残りつつも、言葉が通じない女性のことをまるで亀のように思い特に意識することなく、淡々と毎日を過ごしていた。
しかし、お腹の子どもが大きくなるにつれ、自殺で亡くした自分の息子が産まれた頃のことを思い出していく。次第に女性とお腹の子に情が出てくるようになっていくが・・・。
共犯者たち
父が失踪し、母と妹の3人で暮らしていた主人公。数年後大人になったとき、偶然失踪した父と再会し、今では年に1回会う関係となっていた。
ある日、妹が息子(つまり主人公の甥っ子)に虐待しているのではという疑いが出てくる。
信じられないと思いつつもそのことを父に相談すると、父は思いがけない行動に出る。
『at home』を読んだ感想
4作品とも家族をテーマにしていますが、俗に言う【普通の家族】ではありません。
血が繋がっていなかったり、離婚している、辛い過去があるなど、なんらかのトラブルを抱えています。
しかし、どの作品も最後にはトラブルを乗り越えて家族の関係が深まったり、より良い方向へ前向きに生きていこうとするなど、決して暗い形では終わっていませんでした。
個人的に好きな言葉は『at home』の主人公の最後のセリフ
「何べんだって始めてやるよ。俺たちは家族だ。誰に向かっても、堂々とそう言ってやる。誰にも文句なんて言わせない」
血が繋がらず、犯罪がばれそうな時は何度も住民票を書き換え続けていた家族ですが、これからも家族であり続ける、なにがあっても家族を続けていくという強い意志が表れていると感じました。
この作品を読んで私は、本当の家族とは血の繋がりだけはなく、絆の繋がりなのかなと思いました。
家族について悩んでいる方、前向きな気持ちになりたい方にぜひおすすめしたいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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